2日目 10:30〜12:00 読売新聞東京本社主催・フォーラムプログラム 「知的技術としての新聞データベース活用法」 参加しようと思っていた他のフォーラム(「もうOPACなんていらない!? −Google時代の文献検索と目録サービス−」)が定員に達したため、代わりに参加したプログラム。「知的技術としての」という部分に惹かれて参加したのですが、プレゼン用に用いた「ヨミダス歴史館」の動作に不具合が発生するなど全体的に進行がもたついていて、聴講者が手持ち無沙汰な時間をすごすことが多かったです。途中で見切りをつけて退席する人も結構な数になってました。 内容 新聞データベースは総分量が多く、身近であり、継続性があるという強みがある。 →掲載に際し査読などが発生する学術データベースとは性格が異なる。 新聞データベースは専門家のためのものではないかもしれないが、音声と映像以外の情報は全てあるとも言える。 読売新聞データベース「ヨミダス歴史館」は1874年の創刊から、1989年までの紙面イメージと、1986年以降から現在まで記事テキストの2部構成。オンラインで全ての紙面を一括で検索できる、新聞データベース。検索結果から原紙を画像で表示する(著作権が存在するものや、冤罪事件など現在では名誉毀損にあたる記事などで、一部例外あり)。プリントアウトは可・コピーは不可。 データベース構築にあたっては、記事にキーワードを与えている。キーワードはシソーラス化(キーワード間で狭義⇔広義の関係を与える)や分類を与えている。編集者の間でキーワードを共通化することも注意を払っている。これを維持していくのは手間がかかるが必要なことだと考えている。ニュースに関しては、正式名称ではなくいわゆる「通り名」もキーワード化している。 新聞のメリット…一覧性、継続性、誰でも読める。⇒結果的に真実を伝える(継続されているからこそ)、真実を報道しようとする(誤報があればフォローする) 継続性がある新聞であれば、探そうと思っていた記事の周辺に載っている記事や、前日や後日の記事も見れば、社会情勢も含めて色々なことが見えてくるはず。 原紙をそのままデータ化することに伴うメリット…例えばいつから「東京」のことを「とうけい」から「とうきょう」と読むことになったのか、全文検索すれば分かる。検索結果から原紙にルビが振られているのを見られる。 昔の新聞ではどういった報道がなされていたかも分かる(明治期には他新聞で報道されていた事がそのまま転載されていることなど)。 感想 創刊からの(ほぼ)全紙面を全文検索が可能、かつ閲覧することができる「ヨミダス歴史館」は魅力的な新聞データベースだと思いますが(極端な話、これがあれば読売新聞の縮刷版はいらないかもしれない)、それ以外の「知的技術としての活用法」にあたる部分は殆ど触れられず、正直肩透かしでした。検索サービスのフォーラムにいけなかったのが尚更残念だよ。 あと、新聞は真実を伝える、ってことですが、真実も色々ありますよよね、報道されない真実とか…フォローされない真実とか、一部分だけ照らされる真実とか…。 2日目 13:00〜14:30 図書館流通センター主催・フォーラムプログラム 「TRC行政経営研究フォーラム『失敗に学ぶ行政改革、失敗しない図書館改革』」 前佐賀市長木下氏による行政改革プレゼン、横浜市立大学理事の南氏による図書館改革プレゼンの2部構成のプログラム。両名のプレゼン用パワポ原稿が参加者に配布されました。 内容。 両者ともに「公務員のコスト意識」と「将来の自治体財政がどうなるか」について強調して話していた。 木下氏 行政の業務内容について、コンサルティング企業の手法をもっと用いて、分析し(流れ分析、漏れ分析、コンジョイント分析など)、改革していくべきだとしていた。重視されるのは「顧客目線」と「将来目標の設定」であるとも力説。 また、地方の産業振興を担う若い人を育てるのが図書館の役割の一つでもある。将来の年齢別人口構成や税収を考えないと、将来自治体は財政危機に間違いなく陥る。 もともと田舎である佐賀だけでなく、今若い人の多い横浜市も将来は老人の割合が増えて、福祉関係予算に予算を割かざるを得ない。そのことを公務員は理解しているのか。 南氏 かつて「貸出1回○○円」というコスト算出を行った者だと言えば誰か分かるでしょう、という前ふりからスタート。 図書館は「貸本屋」的施設から「稼げる」施設へ変わらなければならない。現在は直営と指定管理が混在している状況だが、将来は直営と指定管理の比較がきっと行われる。その時にどう評価されるのか。 指定管理者制度の背景と意義について。単なる「委託」ではなく、管理の全てを指定された者が請け負う方式である。これからの自治体財政で削ることができるのは、人件費と事業費のみ。これまでの行政運営では限界がおとずれる。だから構造を変える必要がある。公務員は単純作業と高度な専門業務、いずれからも離れ、単純作業や高度な専門業務は機械化や外部に委託し、委託内容を設定するところに専門性を発揮していくべき。 結果として人件費が削減されれば、極端な話図書館職員の人数が増えても良い。人件費は宝の山だといえる。 感想 当然ですが2人とも「学者」というよりは「政治家」といった話し方。とにかく話がうまい。聞く側をグイグイ引き込む話術でもって容赦なく「公務員の問題点(特にコスト意識)」と「公の直営の問題点」をずらずらと述べます。公務員の直接サービスをdisりまくり。まあTRCの主催ですからそういう内容だろうと思ってましたけどね。 個人的に気になったのはこのフォーラムではそこで働く人間について触れていないこと。財団の設立をきっかけに「専門集団」としての図書館スタッフを組織化して、管理者業務を請け負うことになった各地の図書館に配置(もしくは派遣)しようという意図が見え隠れしているように個人的に感じますが、少なくとも今のTRCが入っている指定管理者制度の図書館で働くスタッフで社会人として「食っていける」給料がもらえるとは思えない(東海地方のスタッフは時給800円台が相場。昼間勤務のコンビニのバイトと同クラス)。 また国会の答弁で「図書館に指定管理はなじまない」という文部科学大臣の答弁があったことは全く触れていなかったです(その後にあった元桑名市職員さんが話したフォーラムで触れられたのかもしれないが)。そこへの反論があれば、どういった内容のものなのか知りたかったんですけどね。 南氏は「継続性」「専門性」に関しての図書館界からの指定管理者批判を「じゃあ、例えば今の公務員の図書館スタッフは私や木下さんのようなフリーランスで働いている人間に対して本当に『ビジネス支援』できるような知識があるのか。できなければ専門性があるとも給料に見合っているとも思えないし、そういった仕事は民間の方ができる。硬直的になっていては駄目ですよ」といった旨の逆批判を展開していていました。まあ確かにそうですけど、じゃあ指定管理者だったらできるのかという問題じゃなくて、その場合は、別の専門家を紹介すれば良いんじゃないのか(レフェラル・サービス)。 あと両氏のどちらかが「今の自治体事業費の中では土建関係の事業が大きいけれども、日本は土建国家といわれるくらいの国で、多くのステークホルダーが居るからこれをきるのは無理」みたいなことをサラリとおっしゃってましたが、「道路作る事業を一つやめるだけで図書館が物凄く充実させることができる予算が生まれる」と言ってた片山善博さんとは真逆のコメントですね。ていうか、人口減るのに道路とか建物といった社会インフラは新しく作るんじゃなくてメンテナンス中心に転換しないのかな?まあ土木関係者はロビイ活動があるからそう切れないんだろうけど。 指定管理が入って、スタッフの立場が確保されることと、現状の貸出中心サービスから公共図書館が発展できるならそれも選択肢だと思うけども、前者は前述のとおりお寒い状況で、後者は多くが貸出数や開館時間、資料購入の拡大(それは貸出中心路線の拡大と言えるよね)にとどまり、千代田区ぐらいしか、指定管理者が入ることによって図書館が構造変化に近い大きな変化を見せているところは無いのでは?というのが個人的な感想です。 とはいえ、指定管理者が入ったほうが良いと思うような図書館なんて一つもありません!と言い切れないのも辛いところです。 2日目 15:30〜17:00 デジタルライブラリアン研究会主催・フォーラムプログラム 「貸出履歴を利用した新しい利用者支援の展開」 90分という限られた時間で5人の発表者がプレゼンを行うという密度の濃いフォーラム。プレゼンに用いたパワーポイントとは別に、各発表者のレジュメを参加者に配布。 はじめにコーディネータである筑波大学の逸村教授のフォーラムの趣旨説明。 「図書館は利用者の秘密を守る」という原則を守りつつ、利用者の貸出履歴を活用できないか、という問題提起のために開催した。これからは貸出履歴情報を「どう使うか」について考えるべき。使う/使わない、の議論だけでは先に進まない。これからその「どう使うか」について5人が発表を行う。貸出履歴活用の具体議論の第一歩にしたい。 1.貸出履歴による利用者支援の必要性と課題 秋田県立図書館・山崎氏 図書館と図書館システムを取り巻く状況…マーケティングの活用が不可欠になり、マーケティングデータを用いて対象者それぞれに別々のサービスを提供するのが主流になっている。しかし、図書館システムに大きな変化が無い(他に選択肢も無い)。 貸出の履歴の情報価値は…価値ある資料だが、今は捨てられている(他所から購入せずに図書館が生み出せる情報にもかかわらず)。利用者個人から、自分自身の情報を知りたいというニーズもある。 貸出履歴による利用者支援のメリットとデメリット… メリット:新しいサービスの創生 レコメンドサービスのほか、個人情報を霧離した情報をマーケティングデータとして出版界にも影響させる。選書を感覚でなく、データに立脚して行えるなど…。 デメリット:個人情報漏洩と利用者の危惧 ただし何らかの方策を立てれば解消できる割合は大きい。ただ、警察からの請求などにどう対応するかは考えるべきこと。 現状の図書館での検証… 貸出履歴は本当に完全に消去されるのか?貸出データの「ログ」には残っているのでは。 貸出情報以外の守秘義務は行われているか?貸出履歴より大切な情報もある。 利用者は貸出履歴の活用を図書館に希望していないのか?例えば「以前借りた本を再読したいけどタイトルを忘れた」とカウンターで言われたことはないか。つまりニーズはある。 貸出履歴活用の条件… 利用者の許諾とセキュリティ開発が必要になる。もしくは個人の貸出履歴をダイレクトに使わない方法を用いること。システムに標準で組みこまれたら普及するだろうと思う。 貸出履歴は、個人サービスだけでなく、社会貢献にも活用の可能性がある。 2.Project Shizuku による新しい利用者サービス 筑波大学(学部生)・小野氏 筑波大学図書館情報専門学群の学生4名が、図書館システムの新しいサービスの提案として開発。図書館は一つの本を複数の人間が共有している場所であるというメリットを生かした、「本の媒介で他者を感じる」システムを開発。なお、「Shizuku」という名前は貸し出し履歴が見える云々で図書館界で話題になった映画「耳をすませば」の主人公・月島雫から来ている。ウェブ上で提供しているサービスはデータが命であり、貸出履歴をデータとして活用したい。 (これだけ独立した感想)図書館システム的側面を持ちつつも、本を通じたSNS的な「つながり」を重視したシステムになっている。実際に操作画面がムービーで紹介されたが、面白いシステムだと感じた。実際の運用に当たっては様々な障壁があるだろうが、利用者も使っていて楽しいインターフェイスだろう。プレゼンを含めて、大学生とは思えない、凄い! ただインターネット上には「たなぞう」や「読書メーター」「ブクログ」といった読書系SNS(のようなもの)があるので、図書館利用者ならでは、という点を分かりやすく、前面に出していけばもっとおもしろくなるかも。 3.貸出記録の図書館運営への応用 神戸市立中央図書館・松永氏 神戸市立中央図書館における運用に則して、貸出記録の応用の実情を報告。 ネットワークサービスの開始と個人情報保護…「K-libネット」現在インターネット上からの予約受付と貸し出し延長が可能。貸出記録の活用についても検討したが、システム開発にかかる時間と経費が嵩んだため実現に至らず。 利用統計から見えてこないもの…現状の利用統計では、数値の増減をつかむことはできるが、利用者の属性や、どういった人にどういった本がよく利用されているかといった利用実態はきちんと把握できておらず、分析も行えない。結局窓口職員の憶測と勘に頼っている状況。 貸出記憶の応用…貸出記録を、個人が特定できる情報と切り離せば、様々な活用方法が見えてくる。図書館サービスの実態分析を行うことは図書館活動の評価に活用できるし、実態分析の結果、真に住民に役立つ図書館を目指せるのではないか。 4.利用者からみた貸出履歴の活用 −意識調査の概要と結果− 筑波大大学院・佐浦氏 貸出履歴の活用について、図書館界では慎重意見が多いが、実際のインターネットユーザは「図書館が貸出履歴を活用する」ということに対してどのような意識を持っているのかを調査。その報告。 yahooのサービスの一つ「Yahoo!リサーチ」を用いて前億の400人を対象にインターネットによるアンケート調査を実施。図書館のヘビーユーザほど、貸出履歴を用いたサービスを利用したいという傾向が出た。またその中で、「自分の履歴を活用する」ことと比べると「自分の履歴を他人に見せる」事には抵抗があることが傾向としてみられた。 貸出履歴を保存することは、回答者の8割が容認、2割が容認できないと回答。つまりニーズは確実にある。 図書館が貸出履歴を利用する際にユーザが求める条件としては、利用目的の説明と、貸し出し条件の保存を行うかどうかの意思表示が行える機会があること、個人が特定されないことが求められる条件であるという結果がでている。 5.公開鍵番号を用いた貸し出し記録の管理  慶応大学・原田氏(いつものようにマイク無し) 貸出記録を保存しない理由はどこにあるのか… (1)記録データ漏洩のおそれ (2)コンピュータの記憶容量の制約 …現在の技術で解決可能 (3)「記録すること自体が自由を侵す」という信念など …これは技術では対応不可 (1)と(2)は技術進歩と、管理方法を「普通なみ」に行うことで解決可能では。 記憶容量は問題にならないレベル、マニュアルの整備とセキュリティ保護のシステムさえあれば大丈夫では。 貸出記録の暗号化…貸出記録の利用は2つに分けて考える必要あり。 (1)利用者の求めに応じて、貸出記録を開示する場合   →利用者は特定できてよい。図書に関する情報を暗号化すれば記録可能 (2)利用者の貸し出し履歴を用いた図書の推薦などのサービス向上に用いる場合   →図書は特定できてよい。利用者に関する情報を暗号化すれば記録可能 ここから、公開鍵番号方式というデータ暗号化と、データハッシュの生成による、利用者記録の集合化による活用について、実例をふまえて説明。公開鍵番号は、利用者側が少し面倒くさいことさえクリアすれば解決する方法、データハッシュは、データを細かく突き詰めなくても、それなりの水準でレコメンド機能は搭載できる一例として紹介された。 感想 個人的にはいくつかの問題をクリアすれば貸出履歴を活用したサービスは提供しても良いのではないかと考えてます。その実現の可能性を感じるフォーラムでした。 やる・やらないで議論している間に、指定管理者運営の図書館が実装して「利用者に好評、民間だからできるサービス」などと報道されるのは悔しいので、貸出履歴活用実現に際しての中身ある議論がなされることを望みたいですねぇ。 3日目 10:30〜12:00 国立国会図書館主催・フォーラムプログラム 「図書館員の『知』を活用する -カレントアウェアネスポータルとレファレンス協同DBを中心に-」 国立国会図書館の取り組みの方向性についてパワーポイントによるプレゼン方式で行われました。参加者には当日プレゼンのパワーポイントとレファレンス協同データベースの事例のプリントアウト、レファレンス協同データベース・図書館協力ニュース、カレントアウェアネスのパンフレットを配布。なお、インターネット上からもプレゼン書類は閲覧可能。http://current.ndl.go.jp/node/9555 にまとめられています。 内容 今回のフォーラムでは国立国会図書館の図書館協力事業における「場」「資料」「人」の支援のうち、「人」の支援について主にお話しする、という説明と、国立国会図書館関西館図書館協力課の事業説明を前ふりとしてスタート。 ・カレントアウェアネスポータルの場合(当日は略して「カレント・ポータル」としていた)  今回のプレゼンの目標は「カレント・ポータルのことをよりよく知っていただくこと」「今日から早速カレント・ポータルを活用していただくこと」、ということでスタート。 カレント・ポータルはどのようなサイトであるか…図書館関係者が「使える」知をたくさん集めたポータルサイト。 主なコンテンツは「カレントアウェアネスR」「カレントアウェアネスE」「カレントアウェアネス」「調査研究リポート・研究シリーズ」「雑誌新刊目次」。このプレゼンでは、「カレントアウェアネスR」「カレントアウェアネスE」「カレントアウェアネス」について紹介。 カレントアウェアネスRは、ブログ形式による国内外の図書館関連ニュース速報。国立国会図書館の開館日に毎日更新。…速報性重視 カレントアウェアネスEは、カレントアウェアネスRで取り上げた記事をピックアップ、短い解説をプラス。メールマガジン形式でも配信している。 カレントアウェアネスは、重要なトピックについて深く掘り下げたレビュー、解説。雑誌としても年4回発行。…詳細性重視 情報の量・レベル・媒体が違う3つのシリーズで効果的に最新の情報が知ることができる仕組み。 これを新聞のように毎日読めば、図書館界で今何が起きているか分かる。また、新技術やサービスを導入する際の関連情報データベースとしても活用可能。 記事の選定については担当がひたすら国内外の記事を読んで、面白いネタがあれば、掲載するという方法をとっている。 カレント・ポータルとは、世界中の図書館員の知を活用して作り上げられているもの。図書館と図書館員の知の相互活用を図書館協力課が促進するために作られている。 ・レファレンス協同データベースの場合 レファレンス協同データベースとはレファレンスに関する様々な情報を館種を超えて蓄積し、利用できる仕組み。 データ種別は4種類、公開レベルの設定が登録館側で可能。また、登録のための支援ツールを国会図書館側で作成している。 一般利用者にとっては、調べ物の情報源や、レファレンスサービスがどういったものが知るために、また読んで楽しむことにも活用可能。 図書館にとっては、レファレンスの情報源、職員研修素材、サービス改善のためのデータ(自館登録データへのアクセス数が把握できる)、レファレンスサービスの改善素材として活用可能。神奈川県立図書館では、自館サイトから当データベースにおける自館登録事例が検索できる仕組みを作っている。 http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/ref_data.htm 研究者にとっては、研究素材として、図書館情報学の教材として活用可能。 レファレンス協同データベースとは、レファレンスに関する図書館員の「知」の集合体。 質疑応答 Q.カレントアウェアネスに載せる記事の選定基準は? A.選ぶ基準は特に明文化されておらず、担当の判断で選んでいる。基準よりもスピード重視。「載せてほしい」という売り込みのメールもあるが、内容は吟味している。 Q.カレントアウェアネスEやRというが、「E」と「R」は何の略?どっちがどっちか分からなくなるときがある。 A.Eは「E-mail」「Electric」、Rは「Rapid」「RSS」をイメージ。混同しないように、考えます。 Q.コメント機能などの導入予定は。また図書館による情報掲載といった、双方向の情報発信機能の方向性はあるのか。 A.情報発信については、今のところは協力課へメールをください。コメント機能などのソーシャル機能の導入は、現在検討中。 感想 現在でもカレントアウェアネスポータルは便利に使っていますが、業界の皆がカレントアウェアネスを見ることで図書館を取り巻く情報に詳しくなればいいなぁ。はてブの「図書館」タグの記事を併用すれば大体のニュースと図書館を取り巻くネット上での話題は把握できるし。 3日目 13:00〜13:30 (社)日本図書館協会システム研究会主催・フォーラムプログラム 「日本初のオープンソース図書館システムでワンパーソン図書館を動かす -田辺がいなくても、システムは動くのか?-」 当日受付で、フォーラムの次第、参考資料(オープンソースソフトウェアに関する小論文) とCD-ROM、CD-ROMの起動方法についての資料を配布。 フォーラム本編では、参考資料とは別にプレゼンテーションで原田准教授がオープンソースによる図書館システム開発の意義を説明(パワーポイントによる説明ですが、当日配布はなし、後日公開予定だそう)、田辺氏による実機の操作実演、黒沢教授によるオープンソース図書館システムの事業展開の可能性について話した後、原田准教授によるCD-ROMのインストール説明がありました。 原田准教授の説明(例のごとくマイク無し) まず、「図書館システムは成熟したシステムか?」という問いからスタート。 図書館システムに対して不満はあるが、改良は少ない、世間の動き(web2.0化など)についていけていないのが現状。また、図書館運営にソフトをあわせるのではなく、図書館システムに運営を合わせている実情(何かしたいといちいちカスタマイズ費用がかかる)もある。 オープンソースはそこへの対策。新たな図書館システムの選択肢として提示したい。 オープンソースプログラムはプログラムのソースコード(内部構造)が公開されているプログラム。自由な利用、修正、複製、再配布が認められている。例えば、一部のオープンソースソフトウェアは(SQLなど)は既に図書館システムに利用されている。ただ、それを使って作られたソフトが非公開になっていることが多い。 開発にするにあたってのコミュニティが不可欠。多くの人間の意見を集約してプログラムの品質が上がっていく。コミュニティが無ければ開発はうまくいかない。 オープンソース化は劇的な変化、というわけではない。決して安くなるとも安全とも言い切れない。オープンソースはあくまでビジネスモデルの転換である。 図書館へのオープンソースの導入メリットはコスト削減(現在ハードウェアの価格はかなり安くなっている)と導入、運用の自由度が広がること。オープンソースで開発することで、短いスパンで進歩する、意見も反映されやすい、開発者と利用者との間でコミュニケーションがされながら作られる(かもしれない)システムになる。既に海外ではいくつかのオープンソースの図書館システムが配布されている(が、言語や書誌構造などからそのままでは使えない)。 日本でもオープンソースの図書館システムが開発できないか…システム予算に多くを割けない中小図書館(企業の図書室、大学図書館分室など)には朗報になる?オープンソースの図書館システムが成功すれば、大手ベンダーのシステムの開発を促す効果も期待できる。 Project-NextLは図書館システムを図書館の手に取り戻すことを目的に、実際にオープンソースの図書館システムを開発するプロジェクト。 http://next-l.slis.keio.ac.jp/wiki/wiki.cgi?page=FrontPage が公式サイト システムの初期仕様の基本的な考え方は「面白そうなことはできるだけ入れてみる」…amazonと連携(amazonのカスタマーレビューや表紙画像の表示)。2日目に発表のあったProject Shizuku とも連携させることも検討。新着資料や検索結果はRSSで配信などなど…。これらの機能は運用する図書館側で変更することが可能。処理スピードやセキュリティは後で実際に製品化される際にプロが何とかしてくれるだろうという考えで開発している。また、今の利用者はgoogleなどになれているので、検索窓に何らかの単語を入れたら何らかの答えが返ってくると思っている。それにこたえられるようにしたい。 館種を超えたシステムの共通化も視野に入れつつ開発している。 田辺氏によるプロトタイプ実演 システム名はenju(槐)。あくまでプロトタイプの名前なので変更されるだろうとの事。 実際に田辺氏の職場である東京工科大学の蒲田図書館ではプロトタイプを開発しつつ運用している(http://catalog.lib.teu.ac.jp/)。 Ruby(開発言語)でシステムを構築。資料受け入れはISBNや、国会図書館のPORTAとの連携で。FRBRモデル(IFLA=国際図書館連盟の提唱するネットワーク化の書誌モデル。資料を4概念に分けて、一つのタイトルに対して、そのタイトルを含む・タイトルに含まれる資料の関係を記述する。たとえば単行本であったり、ウェブサイトであったり、動画であったり、全集の中の一部であったりということや、他の資料との関連を記述する)を用いて書誌作成。一枚の書誌に対して一つの書籍、という形を取らず、他の要素(映像資料など他メディア)も組みあわせて目録に組み込んでいる。こうすることでウェブ情報と親和性の高いシステムが構築可能(例えば電子ジャーナルやウェブサイト、DVD情報も紙資料と区別せず検索結果に出すことが可能)。 貸出・予約情報をRSSフィード、CSVファイルで入手可能。 ウェブページの情報(オンライン書店や他図書館の所蔵情報)を用いてリクエストが可能。 管理者は、利用者が検索したけれどもヒットしなかった単語を確認可能。それを今後の受け入れ資料の参考にもできる。 運用・開発しながら、図書館の業務について、問い、探っている。それをシステムにフィードバックしている。このシステムは「みんなのもの」。積極的に意見を欲しい。 黒沢教授によるオープンソース図書館システムの事業展開の可能性について オープンソース図書館システムは日本で普及するのか? まずはじめのターゲットは小規模図書館(学校図書館や企業図書室)。ソフトがあれば簡単に運用できるわけではない。自力があれば今日配布したCD-ROMさえあれば使う事ができるだろうが…。例えば技術面でサポートする人が要る、データの移行や環境設定、運用保守にも人は要る。 オープンソース図書館システムを使ってビジネスもできる。ビジネスに使うにあたって色々アイデアは出ると思う(先に述べたような部分で代金徴収すれば…)。広く浅く契約すればお金になるはず。 来年春には当オープンソース図書館システムの業者向け説明会を行う予定。 原田准教授によるインストール説明 配布資料の説明書に沿ってインストール方法を説明。今日焼いたばかりのCD-ROMなので、動かなければまた連絡して欲しい。 感想。 実際に配布されたCD−ROMを説明書どおりに動かしてみました。 問題なくシステムが立ち上がった。プロトタイプであり、全てCD-ROMにアクセスして動くので、動作は正直重いです。これは仕方ないです。 あと、ログインユーザ名とパスワードが必要な画面がいくつかあったのですが、何を入れたらいいのか分からず。どこかに設定画面があるんでしょうか?でもパスワードは外部記憶なんですよね。ユーザー設定をするメニューがどっかにあるのかな…自分は見つけられなかったけど。 とにかく、こういった面白いシステムがちゃんと動いていることが凄い。サポートとマニュアルがきちんとしており、パラメータ設定などが(管理者のみが)直感的に操作できて、TRC-MARCが使えるのならば、小規模の公共図書館や学校図書館での使用に堪えるものではないかと思います。色々ゴテゴテした機能をつけて、他サーバとの連携機能が多い大規模館のシステムは、そう簡単にいかなさそうだけど…。 私個人としても現在の図書館システムの開発は頭打ちになっていると感じてます。新システムができたと話を聞いても、RSS対応や(登載するかどうかは別として)レコメンド機能といった新機能を全く打ち出してきていない。海外のオープンソース図書館システムを日本版にカスタムしてみたりしないの?って某社が営業に来た時に訊いてみたけど、「大手はやらないでしょうね、やるとしたらベンチャーですよ」とつれない返事が…。 色々とおもしろそうな機能をつんでいるこのシステムプロジェクトには個人的には非常に期待しています。これを受けて大手ベンダーが重い腰を上げて動くかどうかが一番気になるところですが。 3日目 15:30〜17:00 図書館流通センター主催・フォーラムプログラム 「図書館向けデジタルコンテンツ配信サービスの紹介 〜本格的な電子図書館実現へのシナリオ〜」 TRCと大日本印刷(以下DNP。DNPはTRCの親会社)の共同事業として実施している図書館向けデジタルコンテンツ配信サービスの案内と、実際に運用している千代田図書館の取り組み、管理者であるシェアードビジョンの担当者(導入の担当者であり、現在は千代田図書館の現場担当を外れている)による発表の2本立て。 DNPのプレゼンについては資料の配布がありましたが、シェアードビジョンのプレゼン資料は配布されず。千代田図書館の取り組みについてまとめられた資料は珍しかったので欲しかったんですけどね…。 DNPプレゼン こういったことが図書館でできれば面白いのでは、という提案をする。出版物(知)の流通ルートは出版界ルート(民)と図書館ルート(公)とがある。また、資料の電子配信は、稀少コンテンツの電子配信と、新刊・既刊コンテンツの2種類に分かれるが、新刊・既刊コンテンツは民のルートでしか流通していなかった。今回、図書館向けのコンテンツを作成。実際に千代田Web図書館で導入されているシステム、提供されているコンテンツを参考に、他の図書館でも利用できるような環境を広げていきたい。 電子図書館システムはそれだけの単独でも、蔵書検索のシステムとの連動でも運用が可能。 オーディオブック・イメージブック、問題集などで電子書籍の強みを発揮。 千代田web図書館の取りくみ(指定管理者によるプレゼン) なぜデジタルコンテンツを配信したのか。目新しさではなく、千代田図書館の目指すコンセプトを実現することを目的として配信した。それがプロジェクトの成功につながる。 Web図書館は場所をとらないサービス。開架スペースに限界がある千代田図書館にとって、スペースに影響されず、幅広いサービスが展開できるWeb図書館が要請された。また、情報化という時代の変化に合わせて導入していくことを使命とした。 平成19年11月に試験運用開始。平成20年7月から在勤・在学者向けに本格的にサービスを開始した。参考にしたのは韓国のLib.Proシステム。国内用に改良して使用した。10ヶ月で予備調査から開発まで済んだ(うち開発に5ヶ月)。このスピードは指定管理ならではの強み。導入後は、様々な媒体に取り上げられ、特に出版者との連携に注目された。 web図書館システムは、従来の図書館システムとの連動(OPAC検索でもヒットする)、24時間365日のシステム対応、DRM(不正コピーやハッキングから資料を守る)、機能豊富なリーダー(文字拡大、しおり、メモ書き機能など)が特徴。 提供する資料は電子書籍として利用者に提供するメリットがある分野、電子書籍としての特徴を生かすことができるもの(問題集などの書き込み可能資料、音声つきの書籍)を中心にしている。 ビジネスマンの多い千代田区で、ビジネスパーソン向けの資格試験問題集などのデジタル化による提供ができ、また地場産業である出版産業のPR機能も果たす。導入にあたっては、地元の出版者と交渉し、web図書館の内容を機能面、権利面から確認してもらうとともに、web化している資料の紹介を受けた。 Web図書館システムは、仕組みを上手く作れば、間に介在するスタッフが全く不要となり、効率的運用が可能なサービスとなる。 予算化にあたっては、千代田図書館の運営コンセプトにあわせた上で、地場産業である出版者との連携面などをアピールした。 指定管理者発表はここまでで、またDNP担当者が登壇。 国内で本格的に取り組みを始めたのは、千代田区が初めてと言える状況だが、韓国や欧米では、web図書館の内容はもっと充実している。国内図書館でのウェブサービスも蔵書検索などの導入館が増えてきているが、次のステップとして電子資料の提供を検討して欲しい。千代田区での経験も活用したバックアップをさせていただく。電子資料の提供館が増えると、資料単価も低下する。 これを受けて東京大学石川徹也教授より問い Q.電子化する、された資料をわざわざ図書館経由で利用する利便はどこにあるのだろうか。  図書館を経由せずに、ユーザが電子資料に直接アクセスするルートが自然ではないか。  「図書館の役割」としてプレゼンされたことは本当に必要なのだろうか。  Web図書館の本質とは何だと考えますか。 A.売れないコンテンツに光を当てること。個人が手に取らない電子資料を図書館が持てばうまくまわるのではないか。電子図書館の是非/不是非の議論を生んだだけでも千代田図書館には意義があると考えている。図書館サービスを公共サービスとして考えると、電子化も一つの選択肢としてあり、千代田図書館は今回その選択肢をとった。 以下会場から Q.千代田図書館のタイトル選定基準は。 A.出版者側からリストをもらい、そこから選ぶ。正直なところ選択の幅は狭い。参加館が増えたら、安く、幅広くなるのだが…(千代田図書館) 文芸作品を、と考えていたが、紙の本として図書館に無いものを中心にしようと考えている。後は音声や動画を含んだ児童書を充実させたい。(DNP) 雑誌のバックナンバーが電子化に適しているメディアだと思うが。出版社は是非検討を(石川) Q.千代田Web図書館のアクセス数は。館内、館外の利用者の割合は。 A.統計は採取可能だが、いま現場担当ではないので正確な数字は分からない。正直なところ全体量のバランスはよくない。図書館に来られない人の利用が大半。 感想。 2日目午後のフォーラムと同じく指定管理だからできること、を前面に出していた(TRCとは別業者だが)。しかも親会社のDNPと組んでのフォーラムなので、TRCのスタンスも分かりやすいなぁ。電子図書館は将来の可能性としてはあると思うが、今はまだ選択肢が少ないし、著作権料などの保証金がものすごい額になりそうだと思う。 物として残らない情報をどう貸出できる図書館資料として受け入れていくことになるのかは、これからきっと直面する問題ではあると思いますが。実世界には無くて、仮想世界にしかない貴重な資料ってのもこれからはたくさん出てくると思うんですよね。 17:00〜17:40 日本事務器(株)主催・出展者プレゼンテーションプログラム 「システム担当者向けITツール初級講座」 プレゼンテーションプログラムは、展示ホール端にあるスペースで行われた。 内容としては、「Excelでここまでできる!カンタン統計作成講座」、「Microsoft純正ツールでOPACのセキュリティ強化」「WebOPACのアクセス統計はGoogleを使ってビジュアルで把握!」の3本立て。なお、このプログラムのみ事前に参加の申込を行わず、会場での当日受付で参加しました。 内容は配布資料の通り。なのでここで大したことは書けないです。 アクセス統計はExcelのピボットテーブル、セキュリティ強化はWindows Steady State、アクセス統計はGoogle Analyticsを用いた方法を説明していました。 確かに自分でも分かる初級者向けの内容でした。Windows Steady Stateは、OPAC端末にどうぞ、という説明でしたが、利用者向けの館内インターネット閲覧用端末に導入するのが一番効果的だと思いますよ。